2013年6月22日(土)〜2013年9月01日(日)

旅への誘い

 江戸時代は日本人の旅のありようが大きく変化した時代です。参勤交代の確立にともない整備された諸街道、安定した社会や経済の発展に支えられ、従来の公務や商用、あるいは修行や巡礼など必要に迫られての場合ばかりでなく、“旅”そのものを目的として楽しむ人々が増加してゆきました。ガイドブック片手に準備おさおさ怠りなく、名所旧跡を巡り、名物の食べ物に舌鼓…現代に通じる旅の原型が確立した時代でもありました。その様子は、多数遺された旅の手引書や名所案内、道中記などから垣間見ることができます。
 本展ではこうした「旅の本」を通じて、江戸時代の旅をめぐる諸相を紹介します。本の中の旅人たちとご一緒にひとときの心の旅へ、さぁ出かけましょう!

会期
2013年6月22日(土)〜2013年9月01日(日)
料金
入場無料
展示解説
7月13日(土)・8月17日(土)
古文書講座
8月31日(土) 江戸時代の旅案内を読んでみよう!
特別講座
6月22日(土)「東条松平氏と松井松平氏」
小林輝久彦氏([公財]大倉精神文化研究所客員研究員)
岩瀬文庫と現代アートのコラボ企画
「4hon210函~岩瀬文庫でたのしむアートな3日間~」

一、旅の案内

 旅行人口が増え、また印刷出版の隆盛ともあいまって、江戸時代には旅の案内書が多数刊行されました。旅中の携行を考慮して、小型の冊子や小さく折りたたむ形に作られるものも見られます。目的地までのルート図や宿駅間の距離を記した里程表、馬を利用する時の駄賃などといった基本的な情報から、街道沿いの名所旧跡や土地の伝承などにいたるまで、旅する人々が知りたい様々なことがらを掲載した案内書の数々は、現在のガイドブックと同様、旅の必需品でした。

<展示資料>
『東海道名所記』(101―174)・『一目玉鉾』(73―7)・『東海道絵巻』(辰―48)・『駅程記(改正日本道中行程記)』(子―132)・『<新板>東海道分間絵図』(子―296)・『<東海>懐宝道中鑑』(40―37)・『増補登船独案内』(163―15)・『道中独案内図』(子―270)・『西国巡礼道中記』(子―269)・『江島鎌倉往来』(56―14 イ―24/52)・『<讃岐国象頭山>金毘羅詣』(56―14イ―28/52)・『中仙道往来』(56―14イ―45/52)


『東海道名所記』

『一目玉鉾』




『<讃岐国象頭山>金毘羅詣』

『西国巡礼道中記』


二、旅の心得

 安全で快適な旅をするために、事前の準備は欠かせません。必要な持ち物は何か?宿はどんな所を選べばよい?気をつけるべき事柄は?そんな旅人の疑問や心配に答える本を、ここではご紹介します。またこうした“心得”を見ると、当時の旅にはどのような困難や危険があったのかということをうかがい知ることができます。

<展示資料>
『浪花講定宿帳』(35―19) ・「浪花講鑑札」(101―12)・『道中鑑(増補江戸道中記)』(101―20)・『雅遊漫録』(28―70)・『開巻得宝編』(147―68)・『大日本道中行程細見記』(子―131)・『宇治茶御用道中図景』(111―136)・
『旅行用心集』(参考出品)


『大日本道中行程細見記』




『旅行用心集』

『浪花講定宿帳』




三、旅のあこがれ

 旅が人々にとって身近なものになるにつれ、文芸や絵画などの主要なモチーフのひとつとして、旅や道中風俗が登場するようになりました。街道筋の地名や名所名物、風俗などを巧みに織り込んだ文学作品、旅人の様子や魅力的な風景を描く絵画などは、人々の旅へのあこがれをなお一層そそったことでしょう。

<展示資料>
『東海道五十三次』(子―160)・『<東海道五十三駅>鉢山図絵』(70―27)・『東海道五十三次柳樽』(103―42)・『狂歌道中記』(75―48)・『膝栗毛』(9―53)・『東海道五十三駅図』(子―219)・『東海道名所一覧』(140―22)・『すごろく』(巳―27―29/61)・『<新板>東海道細見双六』(寅―272―5/5)・『新板伊勢参宮道中図絵』(巳―27―4/61)・『海道絵巻』(50―43)


『東海道五十三次』石部

『<東海道五十三駅>鉢山図絵』二川・吉田



『東海道五十三次柳樽』藤川・赤坂

『膝栗毛』




『すごろく』




四、旅の楽しみ

 江戸時代の人々にとって用務でない旅の代表的なものは、有名社寺や霊峰などへの参詣と湯治でした。篤い信仰心や切実な治療目的ばかりでなく、参詣ついでの名所めぐり、湯治を兼ねた物見遊山というのも定番となってゆきました。またこうした旅の道中では、土地の名産品を買い求め、名物の食べ物を味わうことが大きな楽しみとなっていました。心と体の癒し、グルメにお土産…変わらぬ旅の楽しみがそこにあります。

<展示資料>
『銅板画集』(127―33)・『銅板名所図』(144―30)・『銅版画帖』(144―74)・『東海道駅路真景』(7―7)・『凸凹話』(119―244)・『東海道名所図会』(22― 46)・『富士道しるべ(富士山道知留辺前篇)』(102―20)・『箱根七湯集』(109―11) ・『<御山絵図>日光山名跡誌』(8―3)


『銅板名所図』大阪

『東海道名所図会』尾張・有松絞




『東海道駅路真景』




『凸凹話』

『箱根七湯集』


本企画展図録のご紹介

A4 16ページ 110g 300円
完売いたしました。