2013年4月06日(土)〜2013年6月16日(日)

書き入れ本は語る

~「紙の本」の魅力2~

 書入れ本(かきいれぼん)とは、本の著者や持ち主が注や批評、感想などを書入れた本のことです。古い書物に残された書入れからは、過去の持ち主たちが先人の知識や思想を真摯に学ぶ姿や、反対に激しい批判をぶつける姿、本にまつわる亡き人への哀惜の念、思わず笑ってしまう落書きなど、本と人のさまざまな対話のようすが浮び上がってきます。こうした本展ではこうした書入れ本を通して、長い時や空間を超え、人の手から手へと伝わる「紙の本」ならではの面白さをご覧いただきたいと思います。

会期
2013年4月06日(土)〜2013年6月16日(日)
料金
入場無料
展示解説
4月20日(土)・5月25日(土)
特別講座
5月11日(土)「痕跡本のすすめ」
古沢和宏氏(古書 五つ葉文庫店主・『痕跡本のすすめ』著者)
体験講座
6月8日(土)和装本を作ってみよう

◯書いて学ぶ。継承する。

 現代では本に書き込みをする人は少なくなりましたが、近代以前の学者たちは本に積極的に書き込みをすることで、学びや研究を深めてゆきました。こうして成った書入れ本は、その人の知恵の分身のようなもので、弟子や後世の人たちから大切に受け継がれてゆきました。

五経大全 林羅山、愛弟子の書入れを保障 /菟玖波集 柳亭種彦・二代種彦書入れ /万葉集種註 国学四大人の書入れを集約 /万葉和歌集(万葉集) 藤原為家自筆書写本による校合 /四雪草堂 堅瓠集 山本錫夫病床での書入れ


『五経大全』

『菟玖波集』




『万葉和歌集』

『四雪草堂 堅瓠集』




◯異論、反論。

 ときには本の内容や著者に対する異論や反論も書入れられます。感情をあらわにした激しい批判も、読み手が本に対して真剣勝負を挑んだ証でしょう。

北越奇談 読者が著者橘崑崙と奇才平賀源内をこきおろす /鳴弦蟇目考  伊勢貞丈の説を本居宣長が批判/神道蔀障弁 儒学者と国学者の批判合戦 /大和物語抄 北村季吟の解説を賀茂真淵が訂正


『北越奇談』

『鳴弦蟇目考』




『神道蔀障弁』

『大和物語抄』




◯人は死して本を残す。

 本は、著者や持ち主の人となりや想いを映す鏡のようなものです。人が死に、残された本を見るとき、その縁の人たちは特別な想いを抱かずにはいられません。そして良い本は、幾世代も読み継がれてゆき、亡き人の魂もそのなかで永遠に生き続けます。

廓文章 太田南畝妾・お賤の遺品 /元宝正享町触 太田南畝甥・杉田信義書写本 /後藤六代彫物目利秘伝集 中田友睦、養曽祖父の書写本に感激 /十六夜日記 太田治光筆写本、曾孫が羽田八幡宮文庫へ奉納 /三河国古蹟考 羽田野敬雄、渡辺政香の死を悼む


『廓文章』

『元宝正享町触』




『十六夜日記』

『三河国古蹟考』




◯蔵書印も語る。

 「蔵書印」とは、本の持ち主が自分の蔵書に押す印鑑のこと。本を愛した古人たちは、さまざまに趣向を凝らした蔵書印で自らの蔵書を飾りました。蔵書印を見れば、その本がどのような人たちの手を経て、どんな運命を辿ってきたかがわかります。

宝星陀羅尼経 宋版一切経の零本 東福寺塔頭三聖寺・大行満阿闍梨願海蔵書印 /周易伝儀 心華元棣・彭叔守仙蔵書印 /虚堂和尚語録 妙心寺第193世顕州宗密・岡本閻魔庵蔵書印/前太平記 松平定信・桑名藩校蔵書印 /礼記 初代尾張藩主徳川義直蔵書印 /伊勢鸚鵡石記 木村鉄太郎書入れ 続冠辞考 屋代弘賢不忍文庫・阿波藩主蜂須賀家阿波国文庫、小杉椙邨旧蔵本


『虚堂和尚語録』

『前太平記』

『礼記』




◯落書きも語る。

 江戸時代人、近代人だって落書きをします。こうした何気ない落書きから、意外なことが判明したり、何十年前、何百年前の読者のさまざまな表情が浮かんでくることがあります。

画図百鬼夜行  妖怪に似た人の名を落書き /諸国因果物語 怪談話に落書き /茅窓漫録 岸田吟香のスケッチと書入れ /工商技芸 看板考 貸本屋の貸出料金表と落書き /うすゆき物語 気に入らない登場人物を攻撃?


『諸国因果物語』




『茅窓漫録』

『うすゆき物語』




◯貴重な追加情報

 書入れから、現在では知ることのできない貴重な情報を得ることもあります。しかし、時には不確実なものもあるのでご注意を。

竹本筑後掾番付集 浄瑠璃『仮名手本忠臣蔵』初演の評判 /般若心経図会 朝倉無声の書入れ /まめなくさ 著者吉田鯉洲正直は有名な祈祷師


『竹本筑後掾番付集』

『まめなくさ』


本企画展図録のご紹介

A4 16ページ 110g 300円 残部僅少です
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