2012年4月07日(土)〜2012年6月10日(日)

雑誌の愉しみ

~明治・大正・昭和初期の雑誌から~

雑誌、お好きですか?
 雑誌ほど時代の空気をまとい、それぞれの読者層の関心や好みに寄り添う出版媒体はありません。雑誌の向こうに、その折々の人の姿が垣間見えます。
 本展では岩瀬文庫の所蔵する明治・大正・昭和初期の様々な雑誌をご紹介します。これらをとおし、出版された当時のくらし・社会・学術・趣味など、人々の心をとらえた事柄をともに愉しんでいただけたら幸いです。

会期
2012年4月07日(土)〜2012年6月10日(日)
料金
入場無料
展示解説
4月28日(土)・5月26日(土)
体験講座
6月9日(土)和装本をつくってみよう

くらし・社会

 明治の幕開けとほぼ同時に誕生した日本の雑誌。その草創期は政論の主張や政府批判といったもの、あるいは文明開化の新風俗や西欧の情報を紹介するなどの、啓蒙的なものから始まりました。明治・大正・昭和初期という世の中が大きく動いた時代、雑誌の扱うジャンルはまたたくまに広がり表現方法も多様化してゆきますが、常にその主題、挿絵や写真に、世相や人々のくらしが映し出されます。

『東京新誌』(20-50) 創刊号(明治9年4月16日)~200号(同13年5月22日)存
『風俗画報』(147-91) 創刊号(明治22年2月10日)~194号(同32年8月10日)存
『智慧の庫(ちえのくら)』(29-4) 1号(明治10年2月26日)~90号(明治16年12月14日)・22~35号付録存
『さちの礎(いしずえ)』(176-68・170-187)第171号(昭和4年8月10日)~247号(同10年12月10日)存 *174号欠
『植民』(176-37) 9巻1号(昭和5年1月1日)~12巻10号(同8年10月1日)存
『中部日本大観』(80-56・49-42イ) 昭和9年版(昭和8年11月15日)・昭和14年版(昭和14年8月1日)存
『JAPAN TODAY&TOMORROW』(80-55・80-57・80-58)№11(昭和13年12月15日)~№13(昭和15年12月15日)・№15(昭和18年1月15日)存






学問・芸術

 社会の近代化が進むにつれ、経済的また文化的に余裕の生じた市民が個人の自己実現や教養の向上などに重きをおくようになります。新興知識人たちの登場は、功利主義が幅を利かす現代ではおそらく発刊・継続するのは難しいような、硬派な学術雑誌やマニアックな研究雑誌の発刊を促しました。当時の日本には、こういった雑誌の刊行を支える読者層の存在がありました。

『博物雑誌』(95-268)第1号(無刊記)~第5号(明治12年7月)存
『此花(このはな)』(126-32) 第1枝(明治43年1月12日)~凋落号(22枝/同45年7月15日/終刊)
『手紙雑誌』(143-116) 1巻1号(明治37年3月)~9巻5号(明治43年10月/終刊)
『時代と工芸』(65-22ニ・65-22ハ) 第1号(『染織と文様』/大正8年10月30日)・第2号(大正10年6月25日)存
『有名無名(ゆうめいむめい)』(74-45) 第1号(明治45年3月25日)・第2号(同6月10日/終刊)
『浮世絵』(96-194) 第1号(大正4年6月1日)~第55号(同9年9月13日/休刊)
『犬梟(いぬふくろう)』(152-233) 第1巻6号(大正5年7月25日)存






書物・文学

 明治20年代から昭和初期にかけて、愛書家や読書子の要求に応える書物をテーマとした雑誌が盛んに刊行されました。昭和2年の段階で、その数は44タイトルに上ります(斎藤昌三「図書研究の専門誌」/『愛書趣味』第8号)。発行者と読者、書物にかける双方の熱意が紙面から溢れるほどに感じられます。

『奇書珍籍(きしょちんせき)』(154-103) 第1輯(大正8年10月1日)・第2輯(同11月20日)・第3輯(吉原号/大正9年6月13日)存
『著書及蔵書(ちょしょおよびぞうしょ)』(92-183) 第1巻第1冊(大正14年2月27日)・第2冊(同年5月8日)存
『書物礼讃(しょもつらいさん)』(168-223) 第1冊(大正14年6月5日)~第8号(昭和2年月日不明)存
『書誌』(176-2) 第1冊(大正14年10月10日)~第2年第2冊(通巻6冊/昭和2年3月25日)存
『愛書趣味(あいしょしゅみ)』(163-222) 創刊号(大正14年10月21日)~19号(昭和3年11月3日)存
『紙魚(しみ)』(163-217) 第1冊(大正15年11月1日)~第24冊(昭和3年10月10日)存






趣味・娯楽

 日本人の間に近代市民としての余裕や自負が生じ始めるのと機を一にするように、雑誌の取り上げる領域が多様化し、個々人の関心事や趣味娯楽の世界へも広がってゆきます。新しい技術やコアな情報を発信するこれらの雑誌はただ好事家(ディレッタント)の慰みに応えるばかりでなく、雑誌を介して同好の士の分野を超えた交流が築かれたり、流行の担い手の裾野を広げる役割をも果たしました。

『寿寿(じゅーじゅー)』(136-75・125-67ヘ・158-21)第1巻1~6号・第2巻1~4号合綴(大正7年)・第3輯(大正9年4月8日)・1号(大正11年9月1日)~11号(同13年9月20日)合綴存
『集古(しゅうこ)』(176-5) 癸亥第5号(大正12年11月25日)~丁卯第5号(昭和2年10月25日)存
『書斎』(123-61) 創刊号(大正15年2月15日)~17号(昭和2年12月10日・終刊)
『歌舞伎新報』(30-128) 第1号(明治12年2月3日)~第1669号(明治30年3月6日)存
『詩神(ししん)』(176-35) 第5巻第2号(昭和4年2月1日)・8~12号、第6巻1号~12号(同5年12月1日)存
『多納趣味(たのしみ)』(74-54イ・90-1)創刊号(昭和2年4月20日)~第2巻第5号(災異号・同3年10月25日)・第3巻第1号(御大礼記念号・同4年1月25日)存
『写真新報』(170-178)第17号(明治23年6月28日)・19号・22号~28号・31号~84号(同28年9月30日・終刊)存




地方の文化

 こちらでは地方で発行された、その地域の歴史や文化などをとりあげる雑誌を紹介します。そのほとんどが個人や、小規模な同好会仲間などの編集・発行によるものです。地方の雑誌出版を育んだのは、余業でつながる共同体が成立し得て、それらにお金や労力を割くことを容認する“時代”でした。皮肉なことに経済が発展するにつれ、こうした活動は姿を消してゆきました。

『上方趣味(かみがたしゅみ)』(36-1・36-2) 創刊(大正4年4月)~大正15年冬の巻(大正15年11月20日)のうち、大正4年(春夏秋冬4冊)・大正5年(新春/発禁・春夏秋冬)・大正7年正月の巻の10冊分欠
『琉球俗謡(りゅうきゅうぞくよう)』『組踊』くみおどり(119-371) 18.4×12.8 和装活版 合綴1冊
『琉球俗謡』第14巻(大正11年7月25日)・『組踊』第1巻(大正11年2月5日)合綴存
『汲古(きゅうこ)』(81-60イ) 第5(昭和2年10月16日)存
『趣味泉(しゅみせん)』(96-132) 創刊号(昭和2年12月15日)~7月号(第8号/昭和3年7月15日)存
『佐渡史林(さどしりん)』(147-53) 「真野山皇陵記」(明治28年1月)・「佐渡国四民風俗」(同9月)・「怪談藻汐草」(同10月)・「鄙之手振」(同11月)・「鼠草紙」(明治29年8月)・「いが栗」(同10月)・「順徳天皇御遺跡捜索之記」(30年1月)・「佐渡天保文芸集」(同3月)・「佐渡郡水害概計表」(同12月)・「天真道学万葉布言」「史談」「佐渡年代記」「永言集」「一心集」「奇書」(刊記なし)存
『本道楽』(147-8) 第1年第1号(大正15年5月1日)~第4巻第6号(通巻24号/昭和3年4月1日)存




本企画展図録のご紹介

A4 16ページ 110g 300円
完売いたしました。