2009年6月20日(土)〜2009年8月23日(日)

秘伝の書~ヒミツ ナノニハ ワケガ アル~

 岩瀬文庫の蔵書の中には、「極秘」「窓外不出」「他見有るべからず」と厳しく記された本が少なからず存在します。多くの場合、書物は人に読ませるために著されるものですし、重要な情報ならばどんどん広めた方が良いでしょうから、「見せるな」というのは不思議です。でも、禁じられれば禁じられるほど、興味が湧いてくるのも人情。本展では、そんな秘伝書の世界をご覧いただくとともに、なぜ「秘密」なのか、何のために伝えるのか、その理由を探ります。

会期
2009年6月20日(土)〜2009年8月23日(日)
料金
入場無料
展示解説
7月4日(土)・8月1日(土)
古文書講座
8月22日(土) 秘伝書を読んでみよう
特別連続講座
史料から歴史の謎を読み解く
学術創成費「目録学の構築と古典学の再生」研究グループ共催
6月20日(土)第2回「持統上皇の三河行幸・再論
         ―再び引馬野遠江説を言上げし、古代の東海地方を論ず―」
原秀三郎氏(静岡大学名誉教授)
7月11日(土)第3回「三河のくにの街道風景と物語」
浅見和彦氏(成蹊大学教授)

其の壱 奥義の伝授〈諸道の秘伝書〉

 “秘伝”とは、「秘密にして容易に伝えない奥義(『広辞苑』)」のこと。すなわち、学問や武術、芸道などにおいて、修練によって一定の高みにまで到達した人間だけが師から授けられる、その道の真髄を記した書が秘伝書です。岩瀬文庫にはさまざまな分野の秘伝書があります。これらの書には、「いつ」「誰(師)から」「誰(弟子)へ」伝授された書であるかが記され、巻末には、必ず「他見他言有るべからず」と厳しい言葉で結ばれています。

<展示資料>
未生流秘伝の巻・尺八秘書・無辺流豊和秘言抄・明石流火術秘法・馬の秘伝書・制札下馬札秘書・後藤六代彫物目利秘伝集・剣工秘伝・東家秘伝・比岐女射術口授秘訣・和歌秘抄・秘厚抄


『無辺流豊和秘言抄』

『一目玉鉾』




『比岐女射術口授秘訣』

『馬の秘伝書』


其の弐 家学の相伝〈公家の秘伝書〉

 冷泉家の歌学、飛鳥井家の蹴鞠道、菅原家の文書道のように、特定の学問を「家学(お家芸)」とする公家があります。先祖から受け継いだ書物と、これに書き込まれた「累代の家説」(代々受け継がれた家独自の学説。テキストの校合、解釈や訓読方法など)に自らの研究を加え、次代へ継承する。こうした何世代にもわたる研究成果が込められた蔵書は家学の核心です。これを秘蔵し、むやみに公開しないことが、 家説の権威を保つためには不可欠です。

<展示資料>
改元記事・装束色目抄集・鷹之秘書・禁秘抄・伊勢物語・枕草紙


『改元記事』

『鷹之秘書』




『伊勢物語』




其の参 集約・研究される秘伝

 限られた人の間で密かに伝えられた秘伝書も、時を経ると「書物」として客観視され、その道を研究するための「歴史的資料」として扱われるようになります。書物文化が発達した江戸時代は、全国の学者の間で頻繁に書物が貸し借りされたり、写本が作られて情報がやり取りされました。秘伝書も例外ではなく、個別に伝えられた秘伝書を集め、これを体系的に整理し、比較し、誤りを正し、歴史的な位置付けを定め、といった考証研究が盛んになりました。

<展示資料>
手綱之秘書・連歌俳諧極秘・古実秘抄・雨眉車・御厨子所秘記・禁秘抄


『手綱之秘書』

『御厨子所秘記』



『連歌俳諧極秘』




其の肆 公開される秘伝

 出版文化が花開いた江戸時代は多くの「秘伝書」が世に現れました。内容は、芸道の家元や専門職人が一般向けに書いた入門書や指南書、日常生活のさまざまなコツを集めた「暮らし便利帳」のようなものです。いずれも情報の受け手は資格無用の不特定多数となり、読むだけで理解ができ、試すことができるというお手軽なものになりました。なかには出処の分からない怪しげな情報もありますが、「秘密の知識を公開」という触れ込みは興味をそそるものです。

<展示資料>
秘伝抄・改正 香道秘伝・人間記臆秘法・弘法大師筆道根元秘事集・金工鑑定秘訣・<秘伝>茶道要録・山繭養法秘伝抄・おとしものいろぬきもの秘伝書・造花むきもの秘伝・秘伝首書 新撰碁経大全・民家日用 広益秘事大全・仙家秘術・知恵の庫


『人間記臆秘宝』

『弘法大師筆道根元秘事集』




『秘伝首書 新撰碁経大全』

『民家日用 広益秘事大全』




『造花むきもの秘伝』


本企画展図録のご紹介

A4 16ページ 130g 300円
完売いたしました。