2008年11月01日(土)〜2009年1月18日(日)

江戸が学んだ西洋 岩瀬文庫の洋学

 近世初頭にポルトガル人宣教師たちによって、キリスト教のほか南蛮流医術や天文学などの自然科学や技術が伝えられました。幕府の鎖国政策によって、南蛮からの伝来は途絶えましたが、南蛮流の学術文化は継承され、その後、世界地理をはじめ、医学や自然科学を中心とした学術への関心が高まり、西洋の学術を学び取る試みがはじまります。それらは西洋のうち唯一交易を許されたオランダを通してなされたので、蘭学とよばれましたが、ペリー来航によって鎖国が解かれると、オランダばかりでなくイギリス・ロシア・フランス・アメリカなどを通して西洋の学術文化を学ぶことになったため、蘭学にかわって西洋学の略語として洋学とよばれるようになりました。今回の展示は、岩瀬文庫所蔵資料によって江戸時代の洋学の歩みを概観します。

会期
2008年11月01日(土)〜2009年1月18日(日)
料金
入場無料
展示解説
①12月13日(土)午前10時~ 平野満氏(明治大学教授)・八耳俊文氏(青山学院女子短期大学教授)・佐藤賢一氏(電気通信大学准教授)による展示の見所の解説
②8月17日(土)午後1時30分~ 当館学芸員による解説
古文書講座
11月22日(土) 岩瀬文庫の洋学資料を読んでみよう!
洋学史学会 2008年度会
12月13日(土)・14日(日)  岩瀬文庫地下ホール

◆今回の展示企画については、洋学史学会の全面協力を得ました。

1、洋学のあけぼの

 新井白石がイタリア人宣教師シドッチから聞き取った海外情報をもとに著した『西洋紀聞』『采覧異言』によって本格的な西洋の研究がはじまった。こうして、世界地理・西洋事情や西洋医学などが研究されるようになり、『解体新書』の翻訳によって蘭学が成立し、本格的な西洋医学研究や自然科学研究へと展開していった。

<展示資料>
『西川如見説・唐人説・和蘭人説』(77-27)・『西洋紀聞』(72-34)・『泰西輿地図説』(16-87)・『旗章図』(168-112)・『西説医範提綱釈義』(15-118)・『瘍医新書』(25-63)・『〈蔵腑真写〉解体発蒙』(70-94)・『解剖存真図』(辰-47)


『泰西輿地図説』

『旗章図』




『〈蔵腑真写〉解体発蒙』


2、蘭学のひろがり

 『解体新書』翻訳出版をきっかけに蘭学が成立すると、西洋のさまざまな事物や医薬を中心とした学術が学ばれるようになった。その中心にあったひとりが大槻玄沢で、彼は精力的に西洋の諸事物を紹介し、啓蒙につとめた。

<展示資料>
『蘭学階梯』(22-69)・『六物新志』(7-32)・『一角纂考』(22-42)・『一角纂考』(57-31)・『蘭畹摘芳初編』(31-87)・『蘭畹摘芳続編』(123-138)・『〈蘭説弁惑〉磐水夜話』(5-11)・[『紅毛雑話』(13-80)・『西遊旅譚』(99-57)


『一角纂考』(22-42)

『〈蘭説弁惑〉磐水夜話』




『紅毛雑話』




3.西洋博物学へのまなざし

 現在とは異なる学問体系のもとにあった江戸時代の本草学は、薬物学から現在の動物学・植物学・鉱物学や園芸や農業などの産業技術をも含むものであった。西洋からもたらされた薬物やリンネの二命名法によって成立した近代博物学は、オランダ語の書物をとおして研究され、日本の自然研究に大きな影響を与えた。

<展示資料>
『〈蘭山亡羊〉二先生トトネウス題名』(27-38)・『遠西医方名物考・同補遺』(15-72)・『和蘭六百薬品図』(子-338)・『ヲスカムプ薬品目録』(30-79)・『草木図説』(27-11)・『泰西本草名疏』(1-56)・『植学啓原』(28-53)・『物印満(ウェインマン)写真並考証』『栗本氏写真品物図』(14-72)・『本草図譜』(46-45)・『竹園草木図譜』(109-40)


『和蘭六百薬品図』

『本草図譜』


4.中国から伝わった西洋学

 西洋から直接、日本に伝わるだけでなく、中国経由で入ってきた西洋学もあった。中国では17世紀のマテオ・リッチをはじめとするイエズス会宣教師らの著述活動が有名であるが、19世紀になるとプロテスタント宣教師の活動も盛んとなった。彼らの書物は中国語(漢文)で記されていることもあって、日本に伝わると、オランダ語の書物より親しみやすく、幕末から明治初期にかけ人々が西洋事情を知るのに大きな貢献をした。

<展示資料>
『海国図志』(26-48)・『航海金針』(23-110)・『内科新説』(28-51)・『植物学』(12-85)


『航海金針』

『植物学』




5.新技術とのであい

 18世紀以降、以前にも増してヨーロッパから科学や技術の知識が流入するようになる。医学ばかりでなく、天文学や数学、測量術、そして軍事技術などが続々と紹介されるようになる。単なる趣味の域を超えて、実践への努力が全国各地で繰り広げられていった。

〈展示資料〉
『刻白爾(コツペル)天文図解』(97-75)・『気海観瀾』(10-70)・『遠西観象図説』(29-35)・『遠西奇器述』(25-59)・『幾何学浅問抄』(162-162)・『分度余術』(100-60)・『西洋度量考』(89-81)・『神器抄』(84-61)・『榴弾私設』(52-62)


本企画展図録のご紹介

A4 19ページ 110g 500円
完売いたしました。