安政見聞誌

あんせいけんもんし102-1443冊

 安政2(1855)年10月2日の夜、江戸とその近郊をマグニチュード6.9の直下型地震が襲いました。死者は江戸だけで7千~1万人、潰家は1万4千3百戸以上に及び、また地震後に起こった火災で江戸市中は約14町四方が焼失しました。『安政見聞誌』は仮名垣魯文著、歌川国芳らの挿絵による安政大地震の雑記録です。震災の様子や後日の暮らしのほか、地震に関する様々な話題の中に「三河万歳」の記事があります。毎年江戸へ巡業する万歳師はいち早く地震のことを歌詞に取り入れ、「軒ぶち返る柱」「幼子を夢中でおぶって姉の方の手を引いて」「涙をこぼす世中の野宿のひもじさに」など生々しく描写し、それでも命があったことを寿ぎました。


崩れ落ちる屋根、壁。迫り来る火の手。老母を背負って、あるいは裸のまま逃げまどう人々。


 本書の前書きに「人々は快楽安逸に慣れ、天災など他人事と気に留めない」ことを嘆き、「後世の人のために本書を記す」とあります。9月1日は防災の日。お宅の災害対策は万全ですか。