建長戯草子

けんちょうたわむれぞうし午-11巻子 1巻 江戸時代後期

 今月は巷でサッカーの話題が賑やかです。足で球を蹴る競技というと、我が国にも蹴鞠(けまり)があります。蹴鞠は勝敗を決めるのを目的とせず、美しく鞠を蹴り上げ、落とさず続けることで優劣を競うスポーツです。その典雅な様子は、多く絵巻物などに見ることができます。

 本書は、著名な『鳥獣人物戯画巻』(京都高山寺蔵/国宝/四巻)のうち、丙巻と称されるものの写しです。巻末には原本と同じく「秘蔵々々絵本也。拾四枚也。建長五(一二五三)年五月日」の奥書がありますが、本書は江戸後期頃、絵師のお手本のために写されたものと思われます。前半は人々が、後半は擬人化された動物たちが、それぞれに囲碁や双六、競馬、山車引きほか、様々な遊戯に興じる姿を闊達な筆で描いています。カエルやサルの公達が催す蹴鞠のシーンでは、澄ました仕草や表情の可愛らしさに、思わず微笑を誘われます。


木の葉の鞠沓(まりくつ)、烏帽子(えぼし)を身につけて蹴鞠に興じるいきものたち。得意げに鞠を蹴り上げるカエルや、高々と上がった鞠を追うサルの姿がいきいきと描かれている。


 さて蹴球世界杯大会(サッカーワールドカップ)。現代の選りすぐりの「名足」(めいそく/蹴鞠の上手な人)たちは、どのような美技を見せてくれるでしょう。