料理献立集

りょうりこんだてしゅう119-3831冊 版本

 この本は、江戸時代に刊行された料理本・献立集の中では最も古いものです。吸い物や膾(なます)、煮物、焼き物、刺身などのお料理について、正月から十二月まで月毎にふさわしい材料の取り合わせを書き並べ、所々に簡単な調理法を記しています。二月の献立の一例を挙げると、小鮎(あゆ)と根芋(いも)の汁、白魚・車えび・さより・つくし・生姜(しょうが)・蜜柑(みかん)の膾(なます)、シラス干(ぼ)し・黒豆・あらめ・山芋の煮物などが載(の)っています。
 『料理献立集』が初めて刊行されたのは寛文10(1670)年ですが、人気が出たため、以降元禄頃までたびたび板行されました。岩瀬文庫にはそのうちの寛文十一年刊の本と十二年刊の本があります。うち十二年の本は刷りも美しく、江戸で最初に活躍した書肆(しょし)(出版書店)の一人・松会市郎兵衛(まつえいちろべえ)刊行の「松会版(しょうかいばん)」と呼ばれるもので、珍重されます。


調理の様子を描いた挿絵(菱川師宣画か)。右上から「雁(がん)の包丁」、「鯉の背切り」、「アンコウの吊るし切り」。 (この絵は新館正面の軒先、一番左の柱の内側に壁画としてプリントされています。探してみてくださいね。)


祝言の献立より  本膳…膾(なます)(魚・大根・生姜(しょうが)・栗)・汁(なまこ・あわび・ごぼう・大根・椎茸)・焼き物・煮物・飯・香の物・あえ物 二の膳…貝焼き、すまし汁(鳥・きのこ・麩(ふ))・蛸(たこ)・かまぼこ・すし・くらげ 三の膳…鴫(しぎ)の羽盛り・汁(何でも時の物)・螺(にし)・えび船盛