むかしありしこと

むかしありしこと36-イ641冊

 表紙をめくるといきなり「親をだいじに苦労かけるな」などの道徳標語で始まるこの本は、江戸時代後期に北本北山(1752~1812/「寛政異学の禁」に猛反対した学者として有名)によってつくられた教訓絵本です。むかし本当にあったことだという勧善懲悪の”実例”を表した絵に、簡潔な説明文を添えてあり、読み書きのあまり得意でない人や子供にもわかりやすく、道徳的な行いを説いています。

 巻末の奇才によれば、本書は人々の品行向上のため無料配布するとあります。さらに、この趣旨に賛同する人には版木を貸すから、何部でも刷って配布してほしいと記されています。実際、岩瀬文庫にあるこの本も、藤井百助なる人が刷って配った本である旨が表紙に書かれています。

 さて、戒(いまし)めのいくつかをご紹介いたしましょう。「身代(しんだい)だいじにバクチを打つな」「女房だいじに他の女に目もかけな」。まだまだありますよ、「子や孫を甘やかすな」「酒飲むな」「朝寝すな」・・・。

 ドキッとしたアナタ!お気をつけあそばせ。悔い改めないと天罰が下るかも?


右上「家族仲良しの家が富み栄えているところ」右下「主人に忠義を尽くした人が出世したところ」左上「嫁をいじめる姑が氏神様に蹴り殺されたところ」左下「姑を大事にしない嫁が雷様に打ち殺されたところ」