万花帖

ばんかじょう卯-1324冊


 とりどりに咲く万の花の写生図をあつめた美しい画帖、『万花帖』。京の高名な本草学者・山本亡羊の六男である山本章夫(あきお)(1827~1903)が、江戸後期から明治にかけて描きためた植物の写生図を、二十四節気(1年を24等分し、立春、大寒など時候にあった名をつけた陰暦の季節区分)ごとにまとめ、画帖に仕立てたものです。表紙および包紙は一条忠香(いちじょうただか)(昭憲皇太后の父)の手製である旨が朱筆で記されています。忠香卿は亡羊の本草学の門人でした。

 本草研究に欠かせない精密な写生画を作成するため、父亡羊の命で15歳の時から蒲生竹山(がもうちくざん)・森徹山(もりてつざん)に師事して絵を学んだ章夫は、様々な動植鉱物を精力的に写生し、数千点の写生画をもしたといわれます。

 本草学者としての深い知識と画家としての確かな腕。そんな章夫の手になる『万花帖』は、うつろう季節の自然美に、見る者の心を酔わせます。


宵待グサ

吹ヅメアヤメ

サツマコンキク