雪華図説

せっかずせつ26-1362冊

 人名あるいは文学作品などで、「六花」と書いて「ゆき」と読ませることがあります。六角形の雪の結晶を花にたとえた、美しい表現です。




 本書は雪に魅せられた殿様、下総国古河藩主・土井利位(どいとしつら)が、家老であり蘭学者の鷹見泉石(たかみせんせき)の指導を得て著した、日本初の雪の結晶の図譜です。顕微鏡を用いて観察・写生した結晶図をはじめ、結晶のできかた、雪の効用などが記されています。正続2偏から成り、正編は天保3(1832)年、続編は同11年の刊行です。




 利位は、大名の公務をぬって結晶の観察をすること20年余、雪が降るたびに外へ飛び出し、黒い漆器に雪をうけ、顕微鏡で検視しては結晶をスケッチしました。掲載された結晶図は総計183種。ふたつとして同じ形のない、繊細な雪の結晶の特徴がよくとらえられており、現代でも高い評価を得ています。




 本書の刊行によって雪の結晶の神秘的な美しさを知った当時の人々の間で、着物の図柄や器物の装飾などに雪華の模様をあしらうのが大いに流行しました。それらのデザインは筆者土井公の官名・大炊頭(おおいのかみ)にちなみ「大炊文様」とも呼ばれたそうです。