錦絵帖

にしきえちょう49-771冊


 幕末から明治初期の錦絵等を多数張り交ぜてある『錦絵帖』の中に、ちょっとおもしろい絵があります。「廓(くるわ)の意気地(いきぢ)」と題されたこの絵は、三代目広重画、西軍(倒幕軍)が江戸入城した慶応4(明治元)年閏4月の作です。西軍の横暴なふるまいを江戸の人々はたいそう嫌いました。これはそんな反感を込めた風刺(ふうし)画です。

 江戸の象徴・気風(きっぷ)のいい花魁(おいらん)「市葉」は、情夫(まぶ)のアイさん(会津)にしっかと寄り添い、菊の紋付で威張る「上方(かみがた)の客」に剣突(けんつく)を喰わせています。一方、上方の客の肩を持つ花魁「萩の戸」、遣(や)り手婆(ばば)「おつま」はそれぞれ長州と薩摩の見立てです。では、アイさんを応援する蛤(はまぐり)の着物は誰?上方の客の後ろで息巻く鰹(かつお)の着物は・・・?もうおわかりですね。