枕草紙

まくらのそうし103-1643冊 天明2年(1782)写

 「春はあけぼの。やうやうしろくなりゆく…」。あまりにも著名なこの冒頭は、春になるとかならず思い出す名文です。枕草子は、今からちょうど千年前の長保3年(1001)ころ、高名な歌人を父に、漢文学者を叔父にもつ才媛(さいえん)・清少納言によって書かれた最初の随筆文学です。清少納言が書いた原本は現存しませんが、優れた文学として昔から多くの写しがつくられてきました。


有名な冒頭部分は、柳原家ならびに岩瀬文庫の蔵書印が押されています。

 岩瀬文庫所蔵の『枕草紙』は、公家の正二位権大納言・柳原紀光(やなぎはらもとみつ)が天明2年(1782)に筆写し、柳原家の秘蔵とした本です。数ある写しのうち、最も古い系統をひくもののひとつで、その元をたどると安貞2年(1228)にさかのぼります。
 本書は系統の確かさや、写し間違いの少なさで高い評価を得ており、日本古典文学大系や岩波文庫などから現在出版されている枕草子の底本(翻刻・本文校訂などに当たって、よりどころとした本)になっています。