2005年4月02日(土)〜2005年9月25日(日)

日本人のナチュラルヒストリー

第Ⅰ部 自然を見つめる-華麗なる彩色図譜の世界-
    4月2日(土)~6月26日(日)
第Ⅱ部 自然とよりそう-薬学から博物誌へ-
    7月2日(土)~9月25日(日)

会期
2005年4月02日(土)〜2005年9月25日(日)
料金
入場無料
展示解説
毎月最終土曜
特別講座
9月4日(日)
「近世日本の本草学~岩瀬文庫の蔵書でたどる~」
平野満氏(明治大学教授)
7月2日(土)
「愛・地球博 瀬戸愛知県館へのおさそい」
協力:瀬戸愛知県館スタッフ
体験解説
4月16日(土)・30日(土)
「はじめてのボタニカルアート~植物画に親しむ~」
講師:辻伸夫氏(NHK文化センター等講師)
7月23日(土)
「鶴城公園の自然を観察しよう!」
講師:岡田速氏(愛知県自然観察指導員)
ギャラリー展示
5月11日(水)~29日(日)「野鳥先生の野鳥原画展」
 ギャラリートーク 5月14日(土)
 「野鳥先生の思い出」
 講師:鈴木昭夫氏(野鳥先生の功績をたたえる会)
 「描かれた鳥たち」
 講師:高橋伸夫氏(西三河野鳥の会)

※6月27日(月)~7月1日(金)は展示入替のためご覧になれません。

かつて日本では、本草学(ほんぞうがく)という学問が隆盛を極めた時代がありました。現在の植物学や動物学、それに薬学に通ずる学問といえるでしょうか。本草学は中国の薬草学=本草(ベンツァオ)を濫觴とします。やがてそれは植物のみならず動物や鉱物へも対象を広げ、書物にまとめられ、優れた薬学(いわゆる漢方)のテキストとして日本へもたらされました。
 薬学として日本へ渡った本草学は、独特の面白い発展を遂げます。則ち、薬学としての研究が深められる一方で、動植鉱物そのものや自然現象など自体に関心を向け、研究対象とする、博物学的な側面をもった学問へと広がっていったのです。具体的で身近ないくつもの切り口から対象にアプローチしてゆく本草学は、専門家以外の人でもとっつきやすく、人々を楽しませる要素をふんだんに持っています。江戸時代の日本では、泰平の世情ともあいまって、大名から町人まで混在したアマチュア本草家の同好会ができたり、小動物の飼育や園芸栽培がブームになったり、珍しい自然産品を陳列する「物産会」が開かれ大盛況を博したりなどと、身分の別なく本草学(博物趣味)が愛好されました。そしてそれらに関するたくさんの書物が出版され、また肉筆の美しい彩色図譜が多大な情熱を注いでつくられました。
 明治以降、西欧の学問体系をとりいれた日本は、本草学を古くて幼稚な学問として切り捨ててしまいました。実利主義や合理性を追求する国策と、ロマンティシズムに満ちた本草学の性質が相容れなかったためでしょう。このことは単に学問のスタイルが変わったというだけでなく、わたくしたちの自然に対する接し方をも変えていったように思います。
 本展は、岩瀬文庫が所蔵する多彩な本草書をとおして、そう遠くはないわたくしたちのご先祖-近代以前の日本人が、豊かに自然とふれあい、楽しみ、共生していたことを追体験しようとするものです。そして願わくば、先人たちが自然に対して注いだ温かく真摯なまなざしを、再評価していただけたら幸甚です。




第Ⅰ部 自然を見つめる -華麗なる彩色図譜の世界- 4/2~6/26

 あでやかに咲き誇る花、鳥は歌い、魚が跳ねる…。
自然が見せてくれる美しさ、多様さに魅せられたひとびとがつくりあげた華麗なる彩色図譜の数々。
そこにはわが先人たちの、自然に対するあくなき探求心、素直な敬意、そして温かなまなざしがあふれています。

草木を見つめる
『萬花帖』(卯-13)/『草花写生』(丑-7)/『竹園草木図譜』(109-40)/『果品』(卯-22)/『菌譜』(70-112)/『本草図譜』(46-45)

魚介を見つめる
『水族写真』(38-56)/『魚類集』(寅-20)/『栗本丹洲魚貝譜』(72-14)/『六百介品(群分品彙)』(46-49)/『介品図証』(46-19)

虫を見つめる
『栗氏千虫譜』(46-38)/『虫譜図説』(136-71)

獣を見つめる
『獣品』(卯-20)/『獣類写生』(49-21)/『鼠族図譜(山海庶品)』(157-96)/ 『鳥類写生』(未-18)

鳥を見つめる
『鳥譜』(46-54)/『聚鳥画譜』(168-52)/『禽品』(卯-17)

石を見つめる
『諸家奇石図』(辰ー19)/『石譜』(辰-61)

異国を見つめる
『和蘭六百薬品図』(子-338)/『竹園草図』(49-7)/『異■(艸冠+白+為)存真図』(45-29)/『蛮草写真図』(41-ロ1)/『本草写生図』(午-81)/『獣譜』(122-135)

すべてを見つめる
『本草図説』(45-11)


『栗氏千虫譜』

『和蘭六百薬品図』

『竹園草図』

『本草図説』


第Ⅱ武 自然とよりそう -薬学から博物誌へ- 7/2~9/25

 日本人の自然観に、密接に結びついていた学問-本草学。中国からやってきた外来の学問であった本草学が日本になじみ、広がってゆくさまは、そのまま日本人と自然とのつきあい方の広がりでもありました。ここでは日本における本草学の受容と変化を、岩瀬文庫の蔵書からたどります。

それは薬草さがしからはじまった
『神農本草経』(29-18)/『本草和名』(8-32)/『本草綱目』(42-24)

広がる日本の本草学
『訓蒙図彙』(136-82)/『大和本草』(2-67)/『本草綱目啓蒙』(15-69)/『本草綱目啓蒙図譜』(97-49)/『質問本草』(89-86)

博物ブーム到来!
〈文芸の世界へ〉

『詩経虫図説』(32-29)/『海幸』(168-158)/『本草写生図』(午-81)

〈園芸大国ニッポン〉
『三都一朝』(27-59)/『長生草』(119-125)/『松葉蘭譜』(2-56)/『桜百種』(127-13)

〈ペット〉
『金魚そだて草』(37-29)/『百千鳥』(124-99)/『犬狗養畜伝』(119-239)

〈博覧会-・珍品コレクション・見世物大流行〉
『物類品隲』(8-98)/『ムツクリヤカツト之図』(午-18)/『<天保四巳日記>海獺談話図会』(19-63)/『武陽観場画譜』(午-94)/『小貝標本』(143-4)

ビジュアル自然界~博物図譜の形成~
『本草図譜』(46-45)/『本草図説』(45-11)

〈山本章夫の写生図譜〉
『花卉百種』(卯-19)/『果品』(卯-22)/『蕈品』(卯-21)/『魚品』(卯-14)/『禽品』(卯-17)/『獣品』(卯-15)/『雑品』(卯-18)

洋学の受容~本草学の終焉
『泰西本草名疏』(1-56)/『植学啓原』(28-53)/『新訂草木図説』(109-82)/『動物図』(巳-58)/『〈新編〉植物学講義』(11-50)/『〈通俗〉動物学精義』(11-37)


『犬狗養畜伝』

『本草写生図』

『小貝標本』


本企画展図録のご紹介

A4 48ページ 220g 600円
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