2004年4月03日(土)〜2004年6月13日(日)

幕末・維新の日本

浦賀への黒船来航から明治維新を迎えるまで、その間わずか15年。
日本は、政治・社会秩序から文化、思想に至るまで、かつてない大変革を遂げました。
また、西欧列強という“他者”の出現によって、「我々の日本」というナショナリズムがはじめて明確に意識された時でもありました。
この幕末・維新という激動の時代を、人々は何を思い、どう生きたのか。
当時の証言者たる資料からその様相を探ります。

会期
2004年4月03日(土)〜2004年6月13日(日)
料金
入場無料
展示解説
4月24日(土)
体験講座
5月8日(土) 和装本をつくってみよう
古文書講座
6月5日(土)
「幕末・維新期の諷刺画を読み解く」

Ⅰ.攘夷か開国か

 19世紀に入り、東アジアの国々が次々と西洋列強に従属する世界情勢の中、幕府は「やがて来る危機」を予見し、日本のとるべき道を真剣に模索していました。嘉永5年のペリーの来航によってその危機が現実のものとなった時、従来の鎖国を貫くには武力衝突が不可避なこと、彼我の軍事格差を埋めるには時間も資金も間に合わないなどの現状を認識し、開国へと政策転換します。しかし世論は、武力を独占することによって民衆の上に支配体制を布いている幕府は、この「国難」にあたって当然国の安泰と誇りを守るべきと考えます。よって幕府の開国政策に大変失望し、その失望はやがて幕府への不信と怒りに変わります。また天皇が異人を毛嫌いしたことから、尊皇派は過激な攘夷論を展開します。

<展示資料>
『諸夷書翰和解』(84-13)・[参考出品]『松平乗全覚書』(西尾市資料館蔵)・『亜墨利加船来航記』(109-53)・『異国落葉篭』(26-イ34)・『楽草紙』(119-53)・『閉留利日本紀行訳本』(52-24)・『校訂常陸帯』(5-10)・『新論』(40-101)・[参考出品]德川斉昭書翰・『海防憶測』(37-149)・『井蛙問答』(95-144)・『甲寅叢書 紅葉山神霊記并海穴捜』(95-156)・『平穏録』(78-29)・『異国物語』(121-68)


『平穏録』




Ⅱ.開国がもたらしたもの

 幕府はアメリカと、ついでオランダ、ロシア、イギリス、フランスとの修交通商条約に調印し、西洋国際体系の中で生きてゆく道を選択しました。しかし天皇の承諾を得ぬままの調印であったため幕府と朝廷の意見対立を引き起こし、勅許違反の幕府を攻撃する尊皇攘夷派の運動が激しくなりました。
外国との交易は横浜港を中心に急速に発展し、一部の貿易商人を大変富ませました。一方で原料不足などから物価の高騰を引き起こし、社会に不安と不満が広がります。民衆は、この社会の混乱は外国貿易のせいであると考え、開国を決めた幕府への批判を強めていったのでした。

<展示資料>
『横浜明細全図』(139-6)・『横浜開港見聞誌』(84-190)・『五カ国条約並税制』(6-20)・『安政襍記』(28-62)


『異国物語』




Ⅲ.倒幕へ

 急速に支配力が揺らいできた幕府は、朝廷と協力することによって支配体制を維持しようとつとめます。しかし天皇が頑迷に攘夷にこだわったことから、幕府と朝廷の間には埋めがたい溝が広がりました。尊皇攘夷を唱える激派は、天皇の意を奉じる者として幕府に条約の撤回を迫り、京都では天誅と称する殺人事件が相次ぎます。幕府に代わる政治体制の確立を意図する外様の雄藩は天皇を擁して幕府との戦闘状態に入り、求心力を失った幕府は敗北します。倒幕勢力は自らが中心となって新しい政権を樹立し、その頂点に天皇を据えます。明治新政府はこれまでの攘夷運動を一転、西欧諸国と相和して日本を「近代国家」にするべく強力な中央集権化を進めます。

<展示資料>
『風説都之錦〈後編〉』(55-3)・『文久行幸記』(163-31)・『大和日記』(78-31)・『長州合戦瓦図』(午-13)・『京都守護職始末』(96-124)・『くるわのいきぢ』(49-77)・『滑稽勝将棋』(巳-27-24)・『有がたき御代の寿』(巳-27-33)・『仙台藩戊辰之始末』(95-289)・『横浜新報もしほ草』(5-30)


『異国物語』

『京都守護職始末』




Ⅳ.文明開化

 明治新政府は西洋に倣って政治・経済・社会・軍備の近代化を図ろうとする政策を推し進めました。当たらしい西洋知識を学ぶため留学生を欧米に送り出し、また多くの欧米人を雇い入れ、様々な分野での指導にあたらせました。
政府主導による近代化は急ピッチで進み、それは単に制度上のことばかりではなく、風俗や文化などまで「開化」のふるいにかけられ、江戸時代的なものは「因循固陋」とみなされ、切り捨てられてゆきました。また、当時の欧米の世界観-欧米キリスト教国は「文明国」、次いで日本・トルコなどの「半文明国」、そしてアジア・アフリカの「未開国」という階層-をも無批判に受け入れ、欧米への劣等感とアジア蔑視を募らせていったのでした。

<展示資料>
『東京築地鉄炮洲景』(49-74)・『東京横浜明治初期錦絵』(132-36)・『当世風俗五十番歌合』(57-4)・『牛店雑談 安愚楽鍋』(8-4)・『学問ノスヽメ』(119-385)


『当世風俗五十番歌合』

『牛店雑談 安愚楽鍋』


本企画展図録のご紹介

A4 20ページ 95g 200円
完売いたしました。