読み書きそろばん~江戸庶民の学びの本~
江戸時代、来日外国人を驚かせたことのひとつに、日本人の高い教育水準があります。
女性や子供までも読み書きができ、また加減乗除などを素早くやってのける驚異の庶民層をつくったのは、ご存知「寺子屋」などを通じた初等教育のたまものです。
こうした教育の広まりは、来たる明治時代の急速な近代化を支える底力ともなりました。
岩瀬文庫には、寺子屋などで使用された江戸時代の初等教育用の教科書が多数所蔵されています。
本展では、日本人の識字率や計算能力を培ったこれら“学びの本”たちをとおして、江戸時代の庶民層の様子やその内容を垣間見てみようと試みるものです。
- 会期
- 2018年9月29日(土)〜2018年11月25日(日)
- 料金
- 入場無料
- 展示解説
- 10月20日(土) 午後1時30分~
- 2階企画展示室
- 古文書講座「江戸時代の教科書を読んでみよう」
- 日時:11月25日(日)①午前10時~11時30分 ②午後1時30分~3時 ※どちらも同じ内容です。
- 会場:岩瀬文庫地階研修ホール
- 資料代:100円
- 定員:①②ともに30名
- ※要予約。11月3日(土)午前9時から電話または直接岩瀬文庫へ。
一.初等教育の教科書―往来物―
往来物の「往来」とは手紙のやりとりを指す言葉で、優れた手紙文を手習いの手本としたことから教科書の代名詞となりました。平安時代から明治時代に至るまで、我が国の初等教育を支えた往来物。手紙のみならず様々なジャンルに広がった様子を紹介します。
二.算学
通貨や品物ごとに様々に単位が変わり、換算比率が複雑だった江戸時代。生活を営む上で計算は欠かせません。そろばんの基礎から日常的な計算から数学パズル的なもの、さらには高等数学まで、当時の人々が学んだ算学の本をご覧ください。
三.江戸の教育熱
通達や取引に必ず文書が介在し、また複雑な計算をともなう経済社会に暮らす江戸時代、読み書きと計算は日常生活に不可欠でした。よって教育の必要性や方法が熱心に説かれましたが、単に知識を授けるばかりが目的ではなく、行儀や公徳心などを身につけることが重視されました。
四.女子の教育
寺子屋のほとんどは男女共学で、また女子専用の寺子屋もあり、女子向けの往来物や教訓書も多数出版されました。読み書きなどの習得もさりながら、従順・貞淑など当時望まれる女性像に添うことが奨励されました。
五.近世から近代へ
明治5(1872)年の学制発布後につくられた学校用の教科書も、スタイルは江戸時代の寺子屋で使われた往来物によく似ています。教育の近代化・統一化が進むとともに、往来物は徐々に姿を消してゆきました。