2022年9月17日(土)〜2022年11月27日(日)

愛知県美術館・愛知県陶磁美術館 移動美術館2022 もじもえもじも

「移動美術館」とは、愛知県美術館と愛知県陶磁美術館がより多くの方に美術に親しんでもらうため、両館のコレクションを県内各地に運んで展示するというものです。
今回は会場となる岩瀬文庫が幅広い分野と時代の蔵書を有する書物の博物館であることにちなみ、「もじもえもじも」と題して、文字や書物にまつわる作品を展示します。
愛知県美術館と愛知県陶磁美術館からは、文房陶磁や絵画、版画、日本画、立体作品等が出品されます。そして、岩瀬文庫からはこれらの作品に対応する古典籍をご紹介します。
本展の作品から、文字を書く、書物を読む、ものごとを記録し、語り伝えるといった行為や情景、そこからひろがるイメージや遊び心をお楽しみください。

会期
2022年9月17日(土)〜2022年11月27日(日)
料金
入場無料
関連イベント
記念講演会はこちら。
スライドトークはこちら。
古文書講座はこちら。

主催/愛知県美術館・愛知県陶磁美術館・西尾市岩瀬文庫

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「もじもえもじも」について

このタイトルを発音したとき、頭の中でどのように単語を区切りましたか?「文字も絵文字も」「文字も絵も字も」「文字も絵も磁も」など幾通りか思い浮かびますが、わたしたちは最後のタイトルが、三館のコレクションが集まった本展の内容を、より表していると考えました。
また「もじもえもじも」は、始めから読んでも終わりから読んでも同じことばになる、回文(かいぶん)という作りになっていて、文字の魅力のひとつである言葉遊びの要素も含めました。

書物に親しむ

書物に親しむ人々の様子が描かれている作品によって、この展覧会を始めます。
大花瓶に描かれているのは、世俗を離れ、自然の中で行う読書や詩作、書画制作などを楽しみとした、文人たちの理想郷といえる風景です。『浄瑠璃物語』の挿絵では室内に置かれた書物が、主人公の知識や教養の高さの象徴として描かれています。小出楢重が描いた女性は膝上で書物を開いています。彼女が小出の妻であり、自分も絵を学んでいたことを知ると、この書物がどのようなものかを想像することができそうです。



染付山水図代花瓶

浄瑠璃物語(西尾市岩瀬文庫)


N婦人像(愛知県美術館)




文字を集める・重ねる・組み合わせる

この章では「コラージュ」にまつわる作品をご紹介します。
コラージュはフランス語での「糊付け」に由来し、複数の素材やその断片等を貼り合わせることです。この技法は20世紀初頭、ジョルジュ・ブラックやパブロ・ピカソらのキュピズム期の作品制作に取り入れられました。布や紙、印刷物など様々な素材の断片をキャンバスの上に貼り付けるコラージュの技法や概念は、均質な平面を切り開き、ルネサンス以降の遠近法に基づく絵画空間を根本的に問い直すものとなりました。


メルツ絵画52、美容(愛知県美術館)

メルツ絵画305、ロボジッツ(愛知県美術館)




文字を書く・刻む-考える・願う・記録する-

文字を書いたり刻んだりすることは、何かを記録し後生へ伝える行為です。時代や場所、用いる方法は異なっても、文字を得て以来、人はそれを繰り返してきたといえます。
この章では、そのような人の営みがうかがえる作品や、ものごとを記録するための、文字そのものに着目した書物などをご紹介します。


ブリュッケ准会員一覧4(愛知県美術館)

刻字壺片(愛知県陶磁美術館)


神字日文伝(西尾市岩瀬文庫)


文房具

そもそも「文房具」は中国で文人の書斎を意味しましたが、やがてその文房に備えられる道具類を文房具というようになりました。文房具を愛玩する文化は書斎の発展にともなって盛んになり、日本では江戸時代に中国的文人趣味が盛行して、文房具への関心が強まりました。特に筆・墨・硯・紙は「文房四宝」「文房四友」と呼ばれて重んじられました。
各時代の人々の生活に合わせ、様々な素材や装飾の文房具がつくられ、また文房具に関する書物が出版されました。古代から現代まで、人々の身近にあった文房具の存在と、人々の文房具への関心を見て取ることができるでしょう。


風字硯(愛知県陶磁美術館)

色絵草花水滴(愛知県陶磁美術館)


中古文房具図(西尾市岩瀬文庫)


物語

この章では、物語をキーワードにして作品をご紹介します。
日本では、平安時代初期の『竹取物語』や中期の『源氏物語』など、古くから物語文学が楽しまれてきました。室町時代後期になると、それまで口承などにより語り継がれてきたお伽話や神話、民間伝承などを、文字と絵で伝える形態が誕生しました。
『かみ代物語』は、神話を絵巻という形で伝える一例です。一方、大正から昭和初期に活躍した小河芋銭は、金太郎という昔話を題材としながら、昔話には登場しない要素を加え、作者の遊び心をうかがわせる一場面を描いています。


金太郎とカッパ(愛知県陶磁美術館)

灰釉烏絵石皿(愛知県陶磁美術館)


かみ代物語(西尾市岩瀬文庫)


文字で遊ぶ-文字絵・絵文字・回文・判じ絵

江戸時代には、自由な発想で文字と絵を巧みに結びつけた、さまざまな文字遊びが生み出されました。
「へのへのもへじ」が代表するように、文字を輪郭線として絵を描く文字絵や、絵を文字の代わりに用いる絵文字、文字や絵に、ある意味を込めて謎解きさせる判じ絵など、その表現は実に多彩で、また機知に富んでいます。これらの文字遊びは、文字の読み書きができるからこそ楽しめる一方で、絵文字は文字の読み書きができない人でも理解できるように、絵や記号でないようを伝えようとする表現の工夫という一面もあります。


渡唐天神図(愛知県美術館)

文字絵指南(西尾市岩瀬文庫)


書物からひろがる

この章で展示しているのは、書物が題材や素材となっている作品です。
荒木高子は、宗教を自分の内面に向き合うことととらえ、聖書を題材にした数多くの作品をつくりました。西村陽平の作品は、高温で焼成するというプロセスを通じて、日常的な物の素材を変質させ、新たにその存在を際立たせるものとなっています。「世界は言葉でできている」と考える福田尚代にとって、言葉と世界をめぐる探求は、作品制作の根底で分かちがたく結びついています。
文字や言葉、書物が作家の手により変容し、新たな姿に転生している、そのような表現の多様な実践を紹介します。


愛知県陶磁資料館所蔵品図録Ⅰ(愛知県陶磁美術館)

原爆の証言(愛知県陶磁美術館)


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関連イベント

記念講演会
①「文字と美術-愛知県美術館の作品を中心に」
②「館蔵現代陶芸作品にみる文字表現」
【日時】
 ①令和4年9月17日(土)午後2時~3時
 ②令和4年10月1日(土)午後2時~3時
【講師】
 ①拝戸雅彦氏(愛知県美術館館長)
 ②佐藤一信氏(愛知県陶磁美術館館長)

学芸員による展示解説(スライドトーク)
①令和4年9月24日(土)
②令和4年10月8日(土)
③令和4年10月15日(土) 各回 午後2時~2時45分
【講師】
 ①愛知県美術館
 ②愛知県陶磁美術館
 ③西尾市岩瀬文庫の各学芸員
【会場】
 岩瀬文庫地階 研修ホール
【定員】
 各回30名(要予約)
【申込】
 令和4年9月10日(土)午前9時から電話または直接岩瀬文庫へ
※9月10日(土)~16日(金)は特別整理期間のため電話のみの受付となります。

古文書講座「昔の“もじ”を読んでみよう!~文字絵や絵文字を中心に~」
【日時】
 令和4年11月5日(土) ①午前10時~11時30分 ②午後1時30分~3時 ※①②とも同じ内容です。
【講師】
 西尾市岩瀬文庫学芸員
【会場】
 岩瀬文庫地階 研修ホール
【定員】
 各回30名(要予約)
【資料代】
 100円
【申込】
 令和4年10月22日(土)午前9時から電話または直接岩瀬文庫へ
※行事については、新型コロナウィルス感染症の影響により定員の削減または中止する可能性があります。


本企画展図録のご紹介

A4 36ページ 154g 800円
図録のご購入方法は刊行物・グッズ/図録のページをご覧ください