植物への恋文(ラブレター) ~本草書から牧野富太郎の手紙まで~
本草学とは古代中国の薬草学を起源とする学問で、日本へもたらされた後、植物をはじめあらゆる自然物を研究対象とする博物学的な学問へと発展を遂げました。日本人にはこの本草学の素地があったからこそ、近代に西洋から移入してきた植物学へスムーズに転換することができたのです。「日本植物学の父」といわれる牧野富太郎も、幼い頃から本草書に触れて植物学について学んでいました。
本展では岩瀬文庫が誇る豊富な本草書を通して、江戸時代以前の本草学から近代の植物学への転換までをたどりつつ、植物に対する真摯なまなざしが成せる精緻で美しい植物図をご覧に入れます。また、牧野富太郎が西尾の植物研究者・名倉誾一郎に宛てた手紙も展示し、植物へ飽くなき情熱を注ぐ二人の交流の一端をご紹介します。
植物への愛が詰まった文(書物・手紙)の数々をお楽しみください。
- 会期
- 2023年11月18日(土)〜2024年2月12日(月)
- 料金
- 入館無料
第1章 本草学のはじまり ~日本への伝来・受容~
本草学の起源は古代中国の“嘗草伝説”に遡ります。薬草を探し、薬草を嘗める(服用する)という実体験の積み重ねが本草学の始まりでした。そのような経験知が長い年月をかけて蓄積・洗練されたのちにまとめられ、本草書が成立したのです。
日本人は中国から伝来した本草書を教材として薬草の知識を学びました。書物に記された薬草が日本のどの植物にあたるかを見極め、栽培に取り組みます。そして、積み重ねた知識や経験をもとに、日本人自身が本草書を手がけるようになっていったのでした。
5_本草和名と大和本草
8_日本における本草綱目
第2章 日本独自の発展 ~華麗なる植物図の世界~
日本の本草学は、自然物のすべてをありのままに記そうという博物誌的な研究へ変容していきます。万物を知ろうとする本草学にとって、そのものの情報を記録し、伝達するための精細な図は欠かせません。時を経るごとに、より正確な、より緻密な写生図が描かれました。
11_本草図譜
12_本草図説
13_万花帖と花卉百種
17_和蘭六百薬品図
第3章 本草学から植物学への転換
江戸時代後期以降、蘭学や洋学の広まりに伴って西洋の植物学が日本に伝来し、宇田川榕庵をはじめ、岩崎灌園や小野蘭山、伊藤圭介らの本草学者によって紹介されました。明治時代には、東京帝国大学で植物学の講義が行なわれ、ますます浸透していきます。本草学から植物学へ、これほどまでにスムーズに転換することができたのは、日本にはこれまで築いてきた本草学の素地があったからこそ、といえるでしょう。
23_植学啓原
24_草木図説
27_日本高山植物図譜
第4章 牧野富太郎と名倉誾一郎
ここ西尾にも、植物の研究に情熱を注いだ人物がいました。その名は名倉誾一郎。独学で植物研究に打ち込み、この地方最初の植物研究団体である「山草会」を率いる傍ら、牧野富太郞とも手紙のやり取りがありました。二人の交流の一端と、地元の植物研究者である誾一郎の業績をご紹介します。
30_名倉誾一郎事蹟
33_富太郎と誾一郎の文通
関連行事
展示解説
【日時】
①令和5年11月25日(土)午後1時30分~
②令和6年2月10日(土)午後1時30分~
【会場】
2階企画展示室 ※予約・料金は不要
古文書講座[中級]「昔の植物学者たちの手紙を読んでみよう!」
【日時】
令和6年1月20日(土) ①午前10時~11時30分 ②午後1時30分~3時 ※①②とも同じ内容です。
【講師】
西尾市岩瀬文庫学芸員
【会場】
岩瀬文庫地階 研修ホール
【定員】
各回30名(要予約)
【資料代】
100円
【申込】
令和6年1月6日(土)午前9時から電話または直接岩瀬文庫へ
体験講座「植物標本を作ってみよう!」
植物を採集して、プレス・乾燥させ、ラベルを作るという押し葉標本づくりを体験できる初心者向け講座です。
【日時】
令和5年12月23日(土)午後1時~4時30分
【講師】
加藤英寿氏(東京都立大学牧野標本館[理学博士])
【対象】
小学生以上(小学生は保護者同伴)
【会場】
岩瀬文庫地階 研修ホール・庭園
【定員】
15名(申込多数の場合は抽選)
【申込】
令和5年11月11日(土)~12月3日(日)
「あいち電子申請」
https://www.shinsei.e-aichi.jp/city-nishio-aichi-u/offer/offerList_detail?tempSeq=83152