2018年4月14日(土)〜2018年6月24日(日)

公家 柳原家の文庫(ふみくら)

 公家の柳原(やなぎわら)家は、歴史や文学の知識をもって天皇家につかえた伝統を持つ家で、鎌倉時代以来、代々朝廷の要職に任ぜられてきました。当館有する旧蔵資料には、政務記録や和歌・文学作品など、実に多種多様な文(ふみ)があり、貴族の政治・文化をあますところなく伝えています。本展では、公家が大切に伝えてきた蔵書の魅力をご紹介します。

会期
2018年4月14日(土)〜2018年6月24日(日)
料金
入場無料
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関連イベント
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古文書講座はこちら(※5/26・27は予約満席。6/16に追加開催)。
岩瀬文庫講座(講師田島公氏)はこちら。

章立て

1章 文人貴族(ぶんじんきぞく)
2章 蔵人から公卿(くぎょう)へ
3章 和歌(やまとうた)の道
4章 文庫(ふみくら)のいろどり
5章 故事(ふるごと)の探求

1章 文人貴族(ぶんじんきぞく)

 柳原家を含む日野(ひの)流一族は、およそ大学寮(だいがくりょう)という国の教育機関での修学を経て官人となっていきました。ここでは中国の歴史書などを読解し漢詩文を自作する能力を培います。修了の後には漢詩文の知識を要する際に活躍しました。本章では、文人貴族としての活動をご覧いただきます。


「園太暦(えんたいりゃく)抄出」(古写本) 室町時代後期写

南北朝時代の公家・洞院公賢(とういんきんかた)の日記『園太暦』の抄出。文和から延文改元する際の記事。文章博士(もんじょうはかせ)柳原忠光(ただみつ)の年号案が採用。室町時代の公家・三条西実隆書写か。




2章 蔵人から公卿(くぎょう)へ

 柳原家や日野流の人々は、蔵人や蔵人頭(くろうどのとう)に就き、弁官(べんかん)・検非違使(けびいし)など実務能力の要する官職を経て、官人の最上位層である公卿へと昇進していきました。本章では、蔵人・公卿としての活動に関わる資料をご覧いただきます。


「改元申沙汰御記(かいげんもうしざたおんき)」 江戸時代前期写


明応10年(1510)の
改元に際し、広橋守光
が担当蔵人として活動
した時の記録。画像は
天皇の命令たる「宣旨
(せんじ)」。




「下知草(げちそう)」 室町時代後期写


柳原資定(すけさだ)
が担当公卿として人事
に関わった時の文書集。




「資定一品改元御記(すけさだいっぽんかいげんおんき)」 江戸時代中期写


柳原資定(すけさだ)
の日記の内、弘治から
永禄への改元(1558)
の記事。公卿として参
加した新年号の審議を
詳細に記す。色紙を多
用し美麗な仕立て。


「御即位清涼殿図(ごそくいせいりょうでんず)」 江戸時代中期写


宝永7年(1710)
中御門(なかみかど)
天皇の即位式時の
清涼殿平面図。




3章 和歌(やまとうた)の道

 貴族が育み・伝え・広めてきた文化の一つに和歌があります。柳原家もそうした公家の一つです。漢詩文の学びにとどまらず、和歌をたしなみ精進する様をご覧いただきます。


「百人一首色紙形(ひゃくにんいっしゅしきしがた)」 江戸時代中期写  ①

同②



同③

同④


↑柳原資尭(すけたか)の筆による百人一首。資尭は、弱冠25歳で死没。技巧を凝らした散らし書き。


「御詠類題(ごえいるいだい)」 江戸時代中期写


柳原紀光(もとみつ)
の歌集。娘の嘉久子が
編集・書写。紀光らの、
和歌に精進する様がわ
かる。恋人への強い想
いを詠んだ歌もある。




4章 文庫(ふみくら)のいろどり

 柳原家本には、貴族の政治・文化に関する書物がたくさんあります。内容は、文字情報が中心です。しかし、絵図や美しい表紙、きれいな色紙があるものも少なくありません。いわば文庫にいろどりを添えるものを中心に集めてみました。


「三節御膳供進次第(さんせちごぜんぐしんしだい)」 江戸時代後期写

朝廷の重要な年中行事である三節会(さんせちえ)で、天皇に御膳を献ずる次第を絵図で示す。


「御即位調度文安図(ごそくいちょうどぶんあんず)」 江戸時代中期写


天皇即位式の儀仗(ぎ
じょう)・調度図集。
平安院政期の即位式の
ものとされている。


「宿紙(しゅくし)」(計10点) 江戸時代中期~後期写


宿紙とは、一度墨書し
た紙の再生紙。薄墨色。
柳原家本には、宿紙が
表紙のものが多い。


「小忌心葉已下図(おみこころばいげのず)」 江戸時代中期写ヵ


小忌衣(おみころも)
などの図集。小忌衣は、
新嘗祭(にいなめさい)
などの神事で着用する
衣服。


「古今香鑑(ここんこうかがみ)」 江戸時代前期写 ①表紙

同② 鶴香炉(こうろ)(右図)。鶏香炉(左図)。

同③ 香札。香に関する遊びに使われる。

同④ 源平香(げんぺいこう)という遊びに用いる旗と香盤(こうばん)。

↑香道に関する著作。香道に関わる知識を丁寧に記す。


「補歴(ぶれき、ほりゃく)」 江戸時代中期写


公卿などの人事に関す
る帳簿。各官職名毎に、
位階の高い順に人名を
記す。折本状で各人の
地位が把握し易い書型。
各代当主の補歴が数多
く残る。


「笏紙(しゃくし) 附封紙」 江戸時代後期


儀式などの際、備忘事
項を記して笏に貼った
紙。


5章 故事(ふるごと)の探求

 鎌倉時代以来の家の長い歴史の中で、傑出した才能の持ち主に柳原紀光(もとみつ)(1746~1800)がいます。彼が生涯情熱を傾けたのが、歴史書『続史愚抄(ぞくしぐしょう)』の編纂です。本章では、紀光の歴史・故事に対するあくなき探求の跡をご覧いただきます。


「続史愚抄(草稿本)」27冊 江戸時代中期写


草稿本。亀山天皇
(1249~1305)から
東山天皇(1675~1709)
まで各一代毎に一冊とする。
紀光30歳以後より筆を
起こし約5年後脱稿。


「続史愚抄(最終清書本)」46巻 江戸時代中期写


最終清書本。亀山天皇紀
から後花園(ごはなぞの)
天皇(1419~70)紀まで。
未完。最終巻は、死没の
一ヶ月前の書写。


「続史愚抄(没後清書本)」26冊 江戸時代後期写


紀光没後の清書本。
紀光没後、柳原家の
某かによって写された
もの。未完。



展示の見どころ

■地方では希少なコレクション
 公家伝来の旧蔵資料の多くは、東京圏や京都の博物館・研究機関に所蔵されています。当館のように地方で多数の公家旧蔵資料を所蔵しているのは稀です。この機会に是非ご来館下さい。

■即位と改元
 あと一年ほどで平成が終わり即位・改元が行われます。柳原家は、即位・改元に多くかかわってきました。このような状況を鑑み、本展では、即位・譲位・改元に関する資料をいくつか出品しています(「御即位清涼殿図」「資定一品改元御記」など)。


関連イベント

■展示解説
 日時/5月26日(土)午後1時~
    5月27日(日)午後1時~
 場所/2階企画展示室内
 ※予約・料金は不要です。

■古文書講座
 ①「百人一首を読んでみよう」
  日時/5月26日(土)
  午後2時30分~4時
  ※初級者向け。江戸時代前期の公家・柳原資尭(すけたか)の書いた百人一首を読みます(「百人一首色紙形」)。
   美しい筆跡を楽しみながら読んでいきます。
 ②「公家の日記を読んでみよう」
  日時/5月27日(日)
  午後2時30分~4時30分
  ※中級者以上向け。14世紀の公家・洞院公賢(とういんきんかた)の日記を読みます(「園太暦」)。
   改元にかかわる記事で、柳原忠光(ただみつ)(柳原家第二代)が登場します。
 定員/①②ともに30名
 場所/岩瀬文庫 地階研修ホール
 講師/当館学芸員
 ※要予約
  5月12日(土)午前9時より予約受付開始
  電話または直接文庫2Fカウンターへ
 資料代/100円
 ※同日に「展示解説」も行っています。是非ご参加下さい。

※上記5月26日・27日開催分の予約は、定員に達しました。
 ご好評によりまして、以下のとおり追加講座(但し「百人一首」のみ)を行うこととなりました(5月17日記)。

■古文書講座(追加開催)
 「百人一首を読んでみよう」
 日時/6月16日(土)
 午前10時30分~12時
  ※初級者向け。江戸時代前期の公家・柳原資尭(すけたか)の書いた百人一首を読みます(「百人一首色紙形」)。
   美しい筆跡を楽しみながら読んでいきます。
 定員/30名
 場所/岩瀬文庫 地階研修ホール
 講師/当館学芸員
 ※要予約。
  随時予約受付。
  電話または直接文庫2Fカウンターへ
 資料代/100円

■岩瀬文庫講座
 日時/6月3日(日)午後2時~
 「柳原家旧蔵本の形成・伝来とその特徴」
 講師/田島公氏(東京大学史料編纂所教授)
 場所/岩瀬文庫 地階研修ホール
 ※予約・料金は不要です。


本企画展図録のご紹介

A4 34ページ 160g 800円
完売いたしました。