古歌仙紅葉集

こかせんもみじしゅう160-831冊

 錦秋の野山は人々をロマンティックな気持ちにします。殊に美しく紅葉する楓は、古来より歌に詠まれ、庭木としても好まれてきました。『古歌仙紅葉集』も、楓に心を寄せた江戸の園芸家・染井伊兵衛によって宝永7(1710)年に著された本です。楓は紅葉のしかたや葉形、大きさ等に様々な種類があります。筆者がそれらのスケッチを描き集めたところちょうど36種になったので、三十六歌仙に見立てることを思いつきました。

 一頁に一種ずつ楓の名前(紅波/もみのなみ、待風/まつかぜ、截錦/きれにしき・・・等なかなか風雅です)、特徴、葉の彩色写生図を印、傍らに『古今集』や『千載集』等からふさわしい歌を選び添えてあります。



 右ページは「笠取山/かさとりやま」。京都の笠取山に発祥する丸葉の愛らしい楓。霧か時雨に遭わないと紅葉しないという。壬生忠岑の歌「雨ふれば 笠取山のもみぢ葉は 行き交ふ人の袖さへぞ照る」を添える。
 左ページは「赤地の錦」。夏の青葉も、秋の紅葉の色も優れて美しいという。後白河院御製「もみぢ葉に 月の光を射し添えて これや赤地の錦なるらむ」を添える。