茶席起図

ちゃせきおこしず144-345点入 江戸時代

 「起絵図(おこしえず)」は建物の図法の1つで、「起図(おこしず)」「建絵図(たてえず)」ともいいます。台紙に平面図を描き、そこに各壁面の内側、外側を描いた図を貼り付け、これらを起こし建てて建物の構造を再現する折りたたみ式の簡易模型です。茶室などの小さな空間に複雑な立体構造を持つ建物の再現に適した図法として、古くから使われてきました。

 岩瀬文庫の起図は、杉製の箱の中に、千利休や小堀遠州、古田織部、片桐遠州、今井宗久といった高名な茶人が考案した茶室のほか、生垣や門、書院、雪隠、待合など、茶道に関する建物の起絵図45点が収められています。

 茶室の出入り口や窓、風炉、床、調度などの配置や、寸法、意匠(デザイン)、柱や壁の素材、釘の高さに至るまで、こと細かに記録されており、茶人たちの繊細な美意識がうかがわれます。


江戸千家の流祖、川上不白が宝暦5(1755)年に神田明神境内に建てた茶室・蓮華庵の起絵図。床柱に鎌倉建長寺の山門の古材を使い、茶道口正面には利休の肖像をまつる利休堂を設ける。