総房水産図誌

そうぼうすいさんずし145-943冊

 「殖産興業・富国強兵」の国策の下、漁業振興を目的に明治16年3月、東京上野で第一回水産博覧会が開催されました。本書は千葉県がこの出品準備のために編さんした水産図誌で、県下の「水産百般ノ事業ヲ図解」しようとするものです。


紺絞台・煤竹車

 中でも最も多くの頁が割かれているのはイワシ漁で、「地曳網」「八手網」などの九十九里浜の伝統的なイワシ漁法やその道具、油や肥料(干鰯・搾粕)への加工法が詳細な図入りで興味深く報告されています。食べて美味しい、頭も良くなるイワシは、当時の農業に欠かせない強力な肥料としても日本人の生活を支えていたのです。


「搾糟製造之図」。搾粕(〆粕)の製法。とれたイワシを大釜で煮込み、油をしぼった後、二・三匹ずつ手でほぐし、天日に干す。油は灯火用。ほかにムシロに広げて干して作る干鰯がある。

 水産博覧会には各府県から同様な水産図誌がこぞって出品されました。開国・近代化という大変革の時代にあって、明治の人々はまず日本の現状を見つめ直すことから始めたのでした。