物類品隲

ぶつるいひんしつ8-986冊

 江戸時代、薬品会と称するイベントがたびたび行われ、盛況を博していました。当初はその名の通り新規の薬品や医療器具などを持ち夜本草学者らの勉強会でしたが、博物学ブームであった世相を反映し、次第に珍しい自然産品や器物などを出陳する博物展覧会の様相を呈してきました。





 本書は、平賀源内(ひらがげんない)のプロデュースによる宝暦7(1757)~12年に計5回開かれ、大成功をおさめた薬品会の出品解説書です。総数2000を超す中から源泉した360品の主要出品物の解説を載せ、そのうち特に珍しい32品は写生図を描かせています。さらには朝鮮人参の栽培法、さとうきびからの製糖・氷砂糖の製法が図入りで紹介されるなど、実に盛りだくさんの楽しい“展覧会図録”です。

 巻頭に掲載の出品物は「ローズワァトル」。和名「薔薇露(しょうびろ)」、つまりバラの香水です。バラの花を舶来のランビキ(蒸留装置)で精製するさまが紹介されていますが、当時の人々にはどんなにかハイセンスで斬新に映ったことでしょう。本書がなおいっそう世の博物学熱を煽ったことは、想像に難くありません。