青柳家事変録

あおやぎけじへんろく96-1331冊

 慶応元(1865)年、三河国某藩の若き当主・青柳頼秋は、同族で格上の同国某藩主・青柳頼春から妹の磯姫をお嫁に望まれます。しかしすでに他家との縁談が進んでいたため丁重に断ったところ、生来短気な頼春は激怒、以来何かと頼秋に嫌がらせをするようになりました。頼秋は耐え忍びますが、先年起こった国元での家臣惨殺事件の犯人が頼春の家臣であることを知るに至りついに堪忍袋の緒が切れ、殿中で刃傷(にんじょう)に及びます。嗚呼しかし、裃の紋を見誤ってまったくの別人を斬ってしまうのです。頼秋は即刻切腹、お家は断絶に。離散した頼秋の遺臣や磯姫は、頼春を討たんとそれぞれ動き出します。一方、頼春家中でも家老が謀反(むほん)を画策、主の暗殺を企てますが…。

 本書は、三河の架空の藩を舞台に展開する仇討ち&お家騒動譚です。作者は不明ですが、ローカルな地名が出てくることから三河の人でしょうか。親子・夫婦の絆、男女の愛憎、忠臣の一途、奸臣(かんしん)の私利私欲・・・複雑に絡み合う思惑の結末やいかに?!気になる方は岩瀬文庫へどうぞ。


二重線の菱繋ぎの中に丸を型押しした、ちょっと珍しい文様の表紙。




頼秋刃傷の場面は、延享4(1747)年の殿中刃傷事件―板倉勝該が、板倉勝清(九曜巴紋)を斬るつもりで、紋を誤認して細川宗孝(九曜紋)を殺害してしまった―を彷彿とさせる。また、頼秋の藩は三河の「菱池」(現・幸田町内。明治に干拓)から30町余との設定だが、このエリア内に板倉家領(現・西尾市東部)あり。