と古し南へ

とこしなへ寅-861冊

 題名の「とこしなへ」は、「とこしえに、永遠に」という意味です。営々と変わらず繰り返される新年の訪れと、それを祝う人々の喜びを、熱田界隈の風物を中心に、闊達(かったつ)な筆で描いた画集です。元治2(1865)年に、地元熱田の画家である貝谷春濤(かいたにしゅんとう)が描き、尾張藩の儒学者・正木梅谷(まさきばいこく)が文章を著しました。

 活気に満ちた市場町の年の市や、正月5日の初えびす、歳末歳始の厄除と招福を祈る熱田神宮の11日の踏歌神事(とうかしんじ)、15日の歩射(ほしゃ)神事、暮れの神宮寺鬼祭りといったさまざまな情景のなかに、当時の巷の人々の風俗や心浮き立つ表情までもが、活き活きと写しとられています。


年始まわりの人々で賑わう神戸町するが屋前。葉付きの竹と松が目立つ背の高い当時の門松の形に注目。右端の三河万歳の太夫(たゆう)が左上の鼓を持った才蔵(さいぞう)を手招きする姿も見えます。