「岩瀬文庫」と聞いて市民の皆さんがまず思い浮かべるのは、この煉瓦造りの旧書庫でしょう。今や岩瀬文庫のシンボルとなっています。
 旧書庫と児童文庫(現図書館おもちゃ館)は大正6年よりいったん休館し、増築されました。 以後、平成14年12月までの約80年間、蔵書は、この旧書庫の中で大切に守られてきました。

旧書庫の構造


  地上三階、地下一階建。設計は名古屋の西原建築工務所(所長はもと愛知県営繕課技師の西原吉治郎)。外壁は煉瓦造り、床と小屋組みは木造の混構造で、外壁の表面には煉瓦の小口積みに似せた素焼きタイルを貼っています。タイルは常滑の陶栄株式会社製造のものです。日本の瓦屋根と洋風の入口上部の装飾や石造りの窓台などが独特な雰囲気を持ち、この時期の特徴的な洋風木造建築として、現在は国の登録有形文化財となっています。
 内部の書架はさまざまな蔵書の大きさや形態にあわせ、幅や奥行き、棚の高さを変えたオーダーメイド品で、湿気がこもらないように書架は板を貼らず、床もすのこ状になっています。地上3階部分には蔵書、地下1階には新聞・雑誌・岩瀬文庫や岩瀬弥助ゆかりの品々が収められていました。

長い年月を経て

 漆喰壁のひび割れ しかし、当時としては最新の知恵を集め、合理的かつ機能的に作られた書庫も、長い年月や二度の大きな地震を経て、ところどころにほころびも見え始めました。また、厚い壁のおかげで書庫内の温度は急激には変化しませんが、真夏には30度を超える時期もあり、除湿機をかけていても書庫内全体が蒸し蒸しした状態になります。一方、冬には書庫内の温度が低下し、空気も乾燥した状態となりました。
  また、和装本も書架に縦置きに隙間なく配架されていました。これは省スペースで、目的の本が探しやすく、多少の地震でも本が飛び出さない、合理的な収め方です。しかし、非常にきっちりと並べられているため、本の出し入れの際に余計な力がかかり、本が曲がったり、両側の本と擦れ合うことで綴じ糸が切れたり、題簽がはがれたりといった危険もありました。

 平成15年に新収蔵庫が完成し、蔵書は現在全て新収蔵庫に収蔵されています。旧書庫は一年に一度、にしお本まつりで内部を特別公開しています。